2009年度活動スケジュール







↑TEZZO by Tetsuya Ota



↑太田哲也KEEP ON RACING


TEZZO RACERS CLUBレポート

2008年4月20日アルファロメオチャレンジ2008東北第1戦

会員No.106 廣畑実
 
車種 アルファGT 2.0





プロローグ

走っていた。「一心不乱」という言葉がぴったりだった。息切れもせず、走っていた。

今日は4月19日。明日、20日は、今年のレースの第1戦、アルファロメオチャレンジ東北シリーズが仙台で開催される。

僕は、19日に神戸で催された会社の部下の披露宴に招待され、あがり症のこの僕がスピーチし、ひととおりの披露宴の式次第を楽しく過ごした後、大急ぎで着替えて荷物を抱え、山肌にこつぜんと姿を見せる新神戸駅に向かって、ひたすら、走っていた。ほとんどの道が下り坂だったのは幸いだった。

これから東京に新幹線で帰り、すぐに愛車に乗って東京を飛び出し、仙台までの道のりを運転しなければならない。なるべく早く仙台に着いて、なるべく長い睡眠時間を確保する。それだけを考えていた。

冷静に考えれば、最近、50メートルも走れば息があがって走れなくなる体だったのに、この時は、そんなことをまったく忘れ、駅に向かってひたすら走っていた。

披露宴の終了時刻がわからなかったので、帰りの切符は買っていなかった。いざとなったら自由席でもいい。そんな思いで、新神戸駅のみどりの窓口で、あせる気持ちを抑えながら言った。

「今から東京に帰るのに一番早い新幹線お願いします。」

丁度、列車が出たばかりだったようで、次の列車まで20分弱待つことになったが、待ちきれずにホームに上がり、ようやく来た列車に乗った。列車の中ではあせっても仕方がない。

東京に到着。急いで荷物を入れ替え、仙台に向けて出発した。

僕の愛車、GTは、後部座席を倒してステーションワゴンのように広くなった荷室に、ノーマルのホイールにポテンザ050を取り付けたタイヤ4本を積んでいた。そう、先週末、師匠の太田哲也さんの指導に従って、サーキットでは、ポテンザ01Rを取り付けたTEZZOホイールをはいて「立派」になった愛車は、レース終了後の交換用に、ノーマルホイールにポテンザ050のタイヤを付けた公道仕様を積んでいたのだった。
太田さんのお勧めで、普段は、ポテンザ050を、レースでは01Rを、ということにしたのだが、今回は、初めてのTEZZOホイールで、不具合があってはいけないので、サーキットでタイヤを履きかえるのではなく、あらかじめ履き替えてサーキットに向かっていた。かっこいいTEZZOホイール姿をレースでしか見られないのはちょっぴり残念だが・・。

ノーマルでは17インチではあるが、太田さんのおすすめで、18インチにアップしている。タイヤの扁平率が上がっているため、道路の振動がコツコツとお尻に当たる気がしていた。


仙台にようやく到着した。時計は3時半を指していた。

途中、休憩は2回。晩御飯は、サービスエリアのカレーだった。

仙台のビジネスホテルは、前回と違うところをとった。前回のホテルは、排水の音がして寝られなかったから、今回は、耳栓を持ってきた。

シャワーを浴びて、すぐに寝た。2時間半は寝られるはずだ。

けたたましいベルの音で目が覚めた。朝だ。あまりにも深い睡眠だったので、どう寝たのかもまったく覚えていない。2時間半寝たはずだ。今まで、レースの前の日はいつも緊張して寝られなかったので、2時間半も寝られたのは驚異的だった。

そう、言ってみれば、今までの中では、車も体もベストコンディションだった。これで遅かったらどうしよう。そんなことばかり考えていた。



太田さん現る

けたたましいベルの音に飛び起きた僕は、てきぱきと30分で身支度を終え、ホテルを出た。途中、仙台市内の別のホテルに泊まっていた中村弥太郎さんと合流し、一緒にサーキットへ向かった。

中村弥太郎さんは、僕の今の目標の人。仙台、筑波、富士、どのサーキットでもラップタイムが僕より数秒速い。レースでラップタイムが数秒違うと、例えば、東北シリーズでは8周するのだから、レース全体では10秒を超える差になり、レース開始時には見えている中村さんの姿は、レース中盤からは、はるか先の、まったく見えない人になる。この人の156は何故こんなにも速いんだろう。ターボでもついてるんじゃないだろうか・・・。

サーキットに到着した。程なく太田さんが登場。太田さんは、今回、アルファ159で参加。

僕は159は、乗用車的で好きではなかった。車高が高くて、「セダン」って感じだ。フロントの面構え、「顔」はかっこいいのに、惜しいな〜って思っていた。

ところが、太田さんのアルファ159は違っていた。僕らの目の前に現れた159を見て、僕は、「げげ〜、かっこいい!」と思った。

ステッカーを車体にペタペタ貼り付けている効果もあってスポーティーさがプンプンしているが、タイヤを245の幅広18インチタイヤに換えて車高を下げた159は、まさに「レースカー」の装いだった。

ん〜、でもやっぱり僕はGTがいいけど・・・。

車から荷物を降ろし、ランプ類にテープを張っていく。いつもどおりの作業をテキパキとこなしていった。

ドライバーズミーティングの時間になった。

今回は、伊藤真一さんは欠席。レースクイーンもいない。ちぇっ・・・・。

午前中は、1時間の走行会だ。今回の走行会は、太田さんの新しい試み。

これまでの走行会では、太田さんの同乗走行がとても勉強になった。太田さんの3.2リッターのGTや2.0リッターのGTの助手席で、太田さんの攻め方を学ぶ。こんな実体験はなかなかできない。

ところが、今回は違うのだ。今回のTezzo Racers Clubの参加者は7人だが、太田さんの同乗走行は、太田さんがメンバーのそれぞれの車を、入れ替わり立ち代わり運転する、という同乗走行。

つまり、太田さんが、僕の車を運転し、僕は、僕の車の助手席でそれを勉強する、というもの。これは凄い!僕のGTもきっと喜ぶに違いない。



太田教授

午前中の走行会が始まった。

今日の僕の愛車GTは、いつもよりドレスアップしている。

それは、ナンバープレート。

昨年のアルファロメオチャレンジ全国統一戦、富士スピードウェイの帰り道、トンカツを塩で食べながら、僕と中村弥太郎さんとで、太田さんに提案をした。

「太田さん、TEZZOのナンバープレート、売ってくれませんか?」

そう。太田さんがレースや走行会に出る時、太田さんの車のナンバープレートは、TEZZOナンバープレートが取り付けられる。いつも、うらやまし〜な〜、かっこいいな〜、って思ってた。富士スピードウェイでは、太田さんが持ってきてくれたTEZZOナンバープレートが、出場した僕と中村弥太郎さんの車にそれぞれ取り付けられた。

太田さんが賛成してくれたので、この春、急遽、希望者に作成することになったのだが、今回の参加者全員が希望した。当然だろう。カッコいいんだもん。

さて、前置きが長くなってしまったが、走行会が始まった。

いきなり、同乗走行になった。「同乗」と言っても、太田さんの車に僕らが同乗するいつもの同乗ではなく、僕達の車一台一台に太田さんが乗り込んで、太田さんのドライビングを見せてくれる、という同乗走行だ。これはめちゃくちゃすごい!僕のGTも、持ち主である僕を差し置いて、太田さんが運転するのを楽しみに待っていたようだ。日ごろのお世話を忘れて太田さんがいいなんて、何てやつだ、浮気者め。

他のメンバーが同乗走行を行っている間、サーキットを5、6周回ることにした。

最初はゆっくり、徐々にスピードを上げていった。おや〜??車が曲がる。車がオーバーステアにならない。コーナーでストレスを感じない。

そう。この冬、あまりにもいろいろな部品を一度に注入した上、タイヤやホイールも急に換えてしまったので、どの部品がどういう効果をもたらしているのか、さっぱりわからなくなってしまったが、コーナーのロールは極端におさまり、コーナーに突っ込んだ時にタイヤのグリップがよく効いて、アンダーステアが減って、ハンドルをいくら切っても曲がらない、なんてことがなくなり、コーナーを抜けた後の立ち上がりで、あまりのエンジン回転の上昇の遅さにいらついていたストレスが今回はまったくない!それどころか、コーナーに入っていって、あれ、ちょっとスピード出しすぎかな、曲がれるかな、という局面であっても、グリッっと車が向きを変えてくれる。変えてくれた直後にアクセルを踏んでも、結構踏ん張ってくれて、そこからスピードを出してくれる。

コーナーコーナーが面白かった。あまりの車の変わりように、驚愕した。でも、恐怖感はまったくなく、ただひたすら、楽しんでいた。「無理を聞いてくれる。」そんな風に思った。「このスピードでは曲がれない!」と思っても、「グイッ」と曲がる。楽しかった。これまで感じていた怖さはどこかに置いてきた。

4周回った最終コーナー入り口、黄旗2本の信号が出ていた。黄旗2本は、コース上に止まっている車がいる。注意しろ、追い越し禁止、のマークだ。

最終コーナー進入スピードをぐっと落とした。あれ?最終コーナーで、後から来る車を見ながらコースに飛び出そうとしているのは、TEZZO RACERS CLUBのメンバー、布井さんだ。あとで聞いたら、最終コーナーでスピンし、コースアウトすると同時に、180度回転してしまい、そのままコースアウトしてしまったらしい。車も本人もダメージ受けていなくてよかったね。

そして、もう一周まわったところで赤旗が出た。赤旗は、レース中断、ピットへ戻れのサイン。

ピットへ戻った。戻って車を出ると、すぐに太田さんが僕の車に乗り込んできた。僕はあわてて助手席へ。「同乗走行」のスタートだ。

ピットからピットロードへ車が出て行く。でも、赤旗中断状態が続いていたため、僕達は、ピットロードで信号が青になるのを待っていた。

その時だった。太田さんが、「何かわからないことある?」と聞いてきた。

わからないことは、山ほどあった。何から聞いていこうか。1対1で太田さんに質問できるなんて、そう滅多にあることじゃない。聞きたいことがありすぎて、何を言ったらいいのかわからなかった。「何を聞いたらいいかがわかりません。」いくらなんでもそんな質問できないし。

トンチンカンな質問から始まった。今では、何を聞いたかさえ覚えていない。1問目は、そんなにトンチンカンだったに違いない。




実践!太田教授

ある程度落ち着いた僕は、ここぞとばかりにいつも疑問に思っていながらも中々聞く機会がなかった質問を色々聞くことにした。

「太田さん、『コーナー出口で「はらむ」』って言いますが、あれは、自然とはらんじゃうんですか?そっちの方向に向けてハンドルを切っていくんですか?」

太田さんにとっては、「え?こういうの、知らないんだ、へ〜。」なんていう素朴な疑問だったに違いない。

4月1日になって、僕の働く会社にも、新入社員が入ってきた。仕事を教えなければならないのだけれど、彼らが何も知らないということを、こちらがちゃんとわかっていないと、何を教えていいかわからない。こちらにとっては常識でも、彼らにとっては初耳なんだ。

そんな素朴な疑問を発した僕に、太田さんは、わかり易く、優しく、親切に教えてくれた。

「『はらむ』って言うのはね、『はらんじゃう』ってことじゃないんだよね。『はらんじゃう』ってことは、アンダーステアが出ているってことで、ハンドルを切っても切っただけ車が方向を変えず、まっすぐ車が進んじゃうってことだよね。『はらむ』ってことは、『はらませる』ってことで、切ったハンドルをまっすぐの方向に『開放してやる』ってことなんだ。ハンドルを切ってタイヤが直進方向と違う方向に向いていると、抵抗が強いってことは座学でもやったよね。その切ったハンドルをまっすぐの方向に開放してやって直進方向の推進力を強めてやること、それが、『はらむ』ってことなんだよね。だから、車のスピード速くなるんだ。」

へ〜〜〜!!目からウロコ。そうなんだ〜。知らなかった。実は、僕は、これまで、「ここではらんで」と太田さんがコース図に記してくれた場所に関しては、「はらんじゃう」ようにアクセルを踏んでも車がちっともそちらに向かってくれないので、その方向にハンドルを切っていた。例えば、左に曲がるコーナーの立ち上がり、右にハンドルを切ってその方向に向かっていた。違うんだね〜。常識?僕にとっては常識じゃあないんだもん。

そのほかにも、「コーナーでアンダーステアが出ちゃって車が方向変えないってことは、失敗ってことだと思いますけど、それでもなんとかそのコーナー、そこであきらめてしまうんじゃなくて、できるだけ速く回りたい。アンダーステアが出てしまった時に、どうすればいいんですか?」
「仙台サーキットってすごく大きなコーナーがありますよね。そこでアクセルはどうしてるんですか。踏むの?踏まないの?」

なんて、次から次へと質問した。その度に目からウロコが落ちていった。ウロコが取れた僕の体重はだいぶ軽くなったに違いない。太田さんの講義は、メタボ対策にもなります。

そうしてる間に、ついに、シグナルが青に変わった。太田さんがアクセルを踏む。グン!!僕が運転するGTではなく、太田さんが運転するGT。軽々とコーナーを回っていく。すげ〜、はえ〜!!!

あっと言う間にピットロード。恋する乙女は去っていく彼氏を見送って、彼氏が座っていた運転席に彼氏のぬくもりを感じながら滑り込む。(あ・・・、僕、男性より女性が好きです・・・・、やっぱり・・。念のため・・・。比喩ですからね!!)

太田さんに習ったことを実践する。「ハンドルを開放する」。すっご〜い!!スピードが乗るよ〜!!コーナー立ち上がりで車がどんどん加速するのがわかった。すげ〜、オモシロ〜!!

数周回ったところでチェッカーフラッグ。ピットインの合図だった。午前中の走行会が終了した。

2時間の休憩だ。さあ、リザルトを取りに行こう。おや?おや、おや、おやや〜?!昨年10月のアルファロメオチャレンジ出場時のベストラップは、2分34秒468。今回の午前中の走行会のベストラップは、2分28秒368。僕の当面の目標の中村弥太郎さんは、2分28秒429。わずかコンマ1秒とは言え、中村弥太郎さんより速い。あれれ?去年のベストラップより6秒速い。っすっげ〜!!

正直、僕は有頂天になった。はいはい、それがその後の失敗につながっていきます。なんてわかりやすい奴なんでしょう、僕って。

太田さんが声をかけてくれた。「すごいじゃない。速くなったね〜。もうこれ以上速くならなくていいんじゃないの?」太田さんが笑いながら言った。

あれま〜、太田さんにほめてもらっちゃった。ハズカシ〜。

今回、車検と同時に車を整備してもらった稲垣さんとも言葉を交わす。「アライメント調整が効果あったんじゃないですかね〜。」太田さんが稲垣メカに話しかける。

そして、太田さんから一言。「あとは決勝で抜かれてアツくならないようにしゃなきゃね。」太田さんは笑いながら言っていた。この一言、やっぱり太田さんはスゴイ人だと、後で思わせるのだった。

昼ごはんが終わるとアルファロメオチャレンジの予選だ。予選と言っても、めいめい走って、ベストラップで決勝順位が変わるだけで、予選で遅くても決勝に出場できない、というような予選ではない。

さあ!僕は、今年のレースのために新調した火の鳥のヘルメットをかぶり、ピットロードへと向かった。



予選

予選が始まった。走行会のラップタイムのままであれば、結構行けるに違いない。

期待を胸にピットロードへと向かう僕。ピットロードに一列に整列し、出口の信号が赤から青に変わるのを待った。

そして、スタート!アクセルを踏み込む!

コースへ出たとたん、コースの右端をスローペースで走る僕。速い車がぐんぐん抜いていく。

アルファロメオチャレンジは、クラスの違う車と混走する。そもそもエンジンの大きさが2リッターしかない僕のGTに比べ、3.2リッターのエンジンの車とは、スピードが違いすぎる。また、僕のGTは少しだけパーツをいじっただけだが、公道を走れないぐらいに改造を施した車も全く違うクラスで出場しており、そういう車は、もう、桁違いに速い。

そんなバカっ速の車と予選を一緒に走ってしまうと、自分の走りができなくなってしまう(きっと相手も同じ思いだ)ので、予選では、速い車にどんどん抜いてもらって、コースがきれいになったところでマイペースで走ることにした。

第3コーナーを回ったぐらいでいよいよコースが空いた。よし!

太田さんに午前中の走行会で教わったことが生きていた。コーナー立ち上がりではらむ→切ったハンドルを徐々に開放してやる。と、車が面白いように加速した。

これまでに教わったことをすべてつぎ込むつもりで運転した。コーナー進入で、ブレーキを踏み続け、車体の向きが変わったらアクセルオン。新しいタイヤ、ポテンザ01Rは、これまでの050ならきっとオーバーステアを起こしてハンドルの方向と車体の方向が一致しなかっただろうタイミングでアクセルを踏み込んでも、しっかり粘って曲がってくれる。

面白い!

ところが、だ。1周目はタイム計測の参考にならないので無視していたが、ちゃんと走れたと思った2周目、ホームストレートのスタートラインを切ったところで見上げたら表示されるラップタイム、2分30秒の表示。

あれ〜??何がいけないんだろう・・・・・。

僕はあせった。よし、次こそ。僕は必死だった。ひとつひとつのコーナーを考えながら曲がる。ところが、次も2分30秒、う〜ん、悔しい。僕はハンドルを叩いた。なんで〜???

と、赤旗が出てピットに帰る。ホームストレートの途中で止まっていた145のせいだろうか。ピットには戻らず、そのままピットロードに残る。残り時間が短くなっていく。あせった。

再開した。残り時間は短いが、自分の走りをするために、速い車に抜いてもらう。

よし!

前を行く赤い車、チームメートの布井さんだった。コーナー立ち上がり、このコーナーは、太田さんが、「ブレーキは、チョコンっと。フェザータッチぐらい。」と言っているコーナーだ。布井さんがコーナー立ち上がりでオーバーステア。土煙だか、タイヤからの白煙だか、一瞬、煙が上がるのが見え、車が左右に揺れ、スピードダウン。内側から抜く!

アクセルをさらに踏み込む。僕の前には誰もいない。

2周回って予選が終わった。

結果は、2分28秒497。結局、午前中の走行会よりコンマ1秒遅いだけで済んだ。

でもなんでだろう・・・・。何が違うんだろう・・。

総合順位は19位。クラス6台中3位。クラスでは中村弥太郎さんが、1.3秒違いの1位、水色のアルファ156がコンマ5秒差の2位。

こんなもんかな〜、ぐらいのリザルトだったが、午前中の走行会より遅いのは、なんとも不本意。せっかく太田さんに色々教えてもらったのに・・・。太田さんに色々教えてもらったから、走行会も速かったんだ、と、せめてそう思うことにした。

さあ、次はいよいよ決勝だ!




決勝

いよいよ、決勝が始まった。

パドック裏に一列に、順位ごとに整列する。去年は、あまりの順位の低さに、一列に並んだ時に、延々と後方に車をとめなきゃいけなかったが、今回は、「延々と」ではない後方に停めればいい。

一列に整列後、ピットロードへ隊列を組んで入っていく。去年はこの入り口でレーシングクイーンが手を振ってくれたから、いっぱしのレーサー気取りだったけれど、今回は、係員の男性が「こっち」って指差すだけ。ちっ、やる気出ないな〜。

ピットロードに整列、信号が青に変わり、順次、周回を回る。僕の前には水色のアルファ156。僕の後には、去年の統一戦、富士スピードウェイでワンメークレースの果てに敗れてしまったTezzoのチームメート市川さん。

周回中、前を行く156がタイヤを暖めるために右に左にとハンドルを切る。「やる気やな〜」。そう思いながら僕はステアリングをまっすぐに保った。

最終コーナーを回り、スターティンググリッドへ。僕の位置、19位は、左右2列に互い違いに並ぶ列の右側。18位の水色156は、僕の左前のスターティンググリッドに停まった。

と、集合に遅れたのであろう、アルファ145が、2列の真ん中を後からすり抜けていって自分のスターティンググリッドに付く。アルファ145はかなりの軽量で、スピードが出る。僕のGTは、今回のチューンアップでノーマルよりは速くなったが、145とは雲泥の差だ。145とGTではクラスも違うので、気にしない。

コントロールタワーで、「?分前」というプラカードが出ているのが見えた。去年のグリッドでは、後方過ぎて、な〜んにも見えなかった。今年のグリッドでは、プラカードが出ているのは見えたが、後方なので文字を確認することはできない。

赤信号が点灯した。この信号が消えるとスタートだ。消えた!スタート!アクセルを踏む!車がぐんぐんスピードを上げる。おっ!左前の水色156のスピードがそれほどあがらない。だんだん近づいている。目の前は145。これには一定の距離のまま。第一コーナーが迫る!145が近づく。密集になった!こわ〜!!え〜い!!ブレーキを踏み、ステアリングを切る。第二コーナー、アクセルを踏む、156が真横より後になった。そのままアクセル、第三コーナー、ブレーキなしでアクセルを踏み続ける。やった!!156を抜いた。やった!!やった!!

と、後から太田さんの乗る赤い159が見えた。僕は去年の筑波サーキットを思い出した。太田さんの赤い車は、シャア少佐の赤い彗星を連想させる。しかも、赤い彗星は、ヘッドライトを付けている。太田さ〜ん、ただでさえ怖いのに、ヘッドライトなんか付けたらびびっちゃうよ〜〜。ヘッドライトはきっと威嚇が目的なのではなく、「抜いちゃうよ〜、気をつけてね。」という太田さんの優しさの現われだろうが、量産型ガンダムに乗る新人ヘッポコ連邦軍兵士にとっては、そうは言っても恐怖だった。156を抜いた歓喜とシャア少佐ににらまれた恐怖とに包まれて複雑な気分で運転を続けた。

本番は、これからだった。そして僕はこの後、太田さんが預言者であることを確信するのだった。



決勝(その2 預言者現る)

最後尾にいた太田さんの赤い彗星が、いつの間にか僕の真後ろに付けていた。僕の運転を全て見透かされてしまっているように思って、極度に緊張した。コーナー、コーナーで緊張して、自分の走りができない。あせればあせるほど、走行会や予選で冷静にコーナーコーナーを攻めていった僕の走りを実現できなかった。

そして、ついに、太田さんは、僕の鈍重なGTを苦もなく抜き去っていく。

ついに、太田さんの赤い彗星が僕の目の前になった。ついて来い、と言っているのだろうか・・・。僕は、筑波サーキットで太田さんが見せた、「ついて来い」のサインを思い出した。でも、これはレースだ。

大コーナー、太田さんにならったとおり、アクセルをハーフにして踏む。すると、ペースダウン中の太田さんの赤い彗星がみるみる目の前に近づいて来る。ふと横を見ると、水色156が車体半分コーナーで僕に追いついており、僕がこのままコーナーを攻めると、156に追突してしまう。「やば!!」

とっさにどんな操作をしたのか、今となっては覚えていない。「ざざざざざ」という音とともに、僕のGTはコーナー立ち上がりでコースアウトした。スピードが極端に落ちる。アクセルを目一杯踏み込んでコースに入りなおしたが、時既に遅し。赤い彗星、水色156の順番の後にくっついて運転するのが精一杯だった。

まるで、太田さんが水色156に高速コースレッスンをするかのごとく、水色156は赤い彗星に付いて離れなかった。

「くそ〜!!なんとか水色156に追いつかねば!!せっかく追い抜いたのに、抜かれちゃったじゃん!」

僕は必死で運転した。かなり頭はカッカと来ていた。コーナーコーナーでの自分の走りなんてあったもんじゃあない。アンダーステアが出まくって、直線で行くべきS字を、コーナーで作られたS字のカーブより大きな弧を描いて回っていた。そんな調子であせって運転しても、速く走れるはずもないが、その時の僕は、ただただ、追いつくことに必死だった。

太田さんの言ったとおりだった。「抜かれてカッカ来ちゃだめだよ。」

何故、太田さんは僕の行動を逐一予言してしまうのか・・・。預言者現る、という瞬間だった。

車はぎゅるぎゅるを音をたてて、つまり、アンダーステアを出しながらコーナーを回っていく。アンダーステアが出てしまうとスピードが出ない。だからますます離される。僕は水色156に嫉妬した。なんで個人レッスン受けてんだよ〜!!



決勝結果

太田さんの赤い彗星、それにピタリとつける太田師匠無料講習参加中の水色156、少し離れて、そして、少しずつその離れ方が広がっていく僕のGT、という順番で、2周ぐらい回っただろうか。最終コーナーの立ち上がり、いつものようにコントロールタワーを見る。チェッカーフラッグだ。

2008年アルファロメオチャレンジ第1戦が終わった瞬間だった。

出走車輌22台中16位、クラス6台中3位の結果に終わった。さて、ラップタイムは?2分26秒666。おや?また少し速くなってる。ただ、そのベストラップは3周目ということなので、預言者太田さんが見事に言い当てた、「抜かれてカッカ」来る前の周回だ。まだ、自分のペースで回っていたときなんだろう。

表彰台に乗れたこと、ラップタイムが昨年の最終レースに比べて8秒も上がったことで少しは満足だった。

抜かれてカッカ来ることのないよう、僕には、精神修養が必要だということがよくわかった。

表彰式になった。昨年までは、表彰式でもらったカップはもらったとたんにすぐに返していたが、今回は、小さいながら、もらえた。これは記念になりそうだ。




エピローグ

昨年、一昨年と、アルファロメオチャレンジ東北は、表彰台に乗っても、カップは手渡されるものの、表彰台を降りる時に主催者に返さなければならなかった。それが残念だった。やっぱり、表彰台に立つからには、記念になるものが欲しい。

ところが!!今年は、小ぶりだけれど、カップと楯がもらえた!うれしかった。これは記念品だ。早速家で飾ることにする。



これがそのカップと楯。どう?カッコいいでしょ!!

赤い色がなんとも言えずしぶい。アルファロメオらしい色。


ところが・・・。アップで撮ってみましょう。

「3rd. Peize」

「Peize」??「パイゼ」??「ペイゼ」??へっ??ひょっとすると「Prize(賞)」、「3rd Prize(3等賞)」のスペルミスでしょうか・・・・・。


気を取り直して、カップを見てみましょう。アップで。

おや??「3ND」??「サーンド」?「スリーンド」?へ??
ひょっとして、「3番」の「3RD」と「2番」の「2ND」がごっちゃになっちゃった??

え〜ん Y(>_<、)Y !! 
せっかくのカップと楯なのに〜。お笑いになっちゃったよ〜・・・・。ざんね〜ん・・!カップと楯は目に付かない場所にひっそりと飾られた。

 








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