2009年度活動スケジュール







↑TEZZO by Tetsuya Ota



↑太田哲也KEEP ON RACING


TEZZO RACERS CLUBレポート

6月24日(日)
アルファロメオチャレンジ東北シリーズ第2戦 in仙台ハイランド
会員No.106 廣畑 実
車種 GT2.0
参加内容 走行会 アルファロメオチャレンジ

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プロローグ

「来週、ニューヨークへ出張決まりました。」
晴天の霹靂とはこのこと。それは、アルファロメオ・チャレンジに初めて挑戦する日の2週間前の日だった。「ニューヨークに出張なんて、カッコイイ」なんて、正直思った。ただ、それは一瞬のこと。ニューヨークは遠し。簡単には行けない。まずは日程を心配した。
「現在の予定は、火曜日に出発して土曜日に帰ってくるパターンです。」
おいおい、それじゃあ帰国の次の日がレースだよ。無理無理。これまで、TEZZO RACERS CLUBで走行会には2回参加した。でも、今回は初めてのレース。アルファロメオチャレンジ初参戦だ。万全な体調でのぞみたい。
「だめだめ。とにかくだめです。金曜日には帰りましょ。」
と、強引に金曜帰りを主張。すったもんだの挙句、月曜日出発、金曜帰国に決定。
社長、ごめんなさい。僕は、プライベートを優先して仕事の日程を調整してしまいました。あ、ついでに言っておきますと、今に始まったことではありません。
なんとか日程だけは確保したものの、世界は広し、地球は丸し。ニューヨークでは時差ボケで毎日2、3時間しか眠れず、帰国したその夜も、明け方まで眠れなかった。心配。それまで2回の走行会は、土曜日の開催で、金曜の深夜に仙台まで走り、ほとんど徹夜で走行会に参加していた。今回は日曜日の開催なので、土曜日の昼間にゆっくり仙台に行き、その夜は温泉にたっぷりつかった上で十分な睡眠を取るという完璧な睡眠計画に、予想だにしなかったニューヨークへ出張の影響で早くも暗雲がたれこみ始めていた。

楽しい道中

土曜日、時差ボケの頭痛を抱え、眠い目をこすりながらまず向かったのは並木メカのいるTEZZOファクトリー。フロントのディスクローターとブレーキパッドを交換した。その前の週、リアのディスクローター、ブレーキパッド、ブレーキオイル、エンジンオイルを交換した上、4点式シートベルトを装着。今回の僕の愛車のグレードアップは完璧だ。まずは、速く走るより安全を考える。走るより止まる。師匠の太田さんのポリシーにのっとった。と思う。
整備が終わり、並木メカを乗せて仙台へと向かう。テキパキと手際のいい並木メカ同乗は何にも増して心強い。たとえ途中で事故って車が原形をとどめなくなっても、並木メカならテキパキとその場で走れるようにしてくれるんじゃないか、って思ってしまうほどの妙な安心感がある。
道中は、並木メカとのおしゃべりタイム。並木メカは仙台までの道のりでシートバックに背中を一度もつけなかったんではないかと思えるぐらいにずっと話した。30代半ばだと思っていた並木メカが、実は僕と同い年であったこと、自動車工学とか機械とかを大学で専門に勉強していたのかと思ったら、並木メカの専門は、ナント「哲学」(!)だったこと、野菜を自宅の庭の畑で育てて食べていたこともあるうらやまし〜い並木メカのスローライフなどなど、道中の話は驚きばかりで尽きることなく楽しんだ。仙台がこんなに近かったのかと勘違いするぐらい夢中で話した。サーキット走行の話になり、「年に3回程度のサーキット走行経験でも、見違えるように腕はあがっていって、ノーマルな車では腕に追いつかなくなりますよ。」という並木メカの言葉は、もっとも僕を勇気付けた。


前夜


あっと言う間の仙台で、温泉にたっぷり浸かり、おいしい料理を堪能し、お酒もそこそこ楽しんだ夜、明日のレース初挑戦に備えてたっぷり眠る完璧な計画が、完璧に崩れ去った。興奮のせいか、時差ボケのせいか、周囲が明るくなるまで眠れなかった。睡眠時間、2時間。まあいいか。睡眠不足はいつものことだから。


走行会


午前中の走行会。サーキット走行は半年以上ぶりなので、コースを思い出す意味でもアルファロメオチャレンジ予選前の走行会は欠かせない。あ〜それなのに、それなのに。僕はやってはいけないことをやってしまった。4点式シートベルトをちゃんと準備せずにいて、走行会開始直前になって慌てて準備し始めたのだった。学生時代を思い出してみよう。受験の当日、試験会場で真新しい鉛筆を真新しい鉛筆削りでおもむろに削り始めるなんてしただろうか。前の日に、ちゃんと道順まで確認し、受験票を確認し、鉛筆は触ると刺さってしまうぐらいシャープに削っていた。「準備は前の日」。学生でさえ当然のことなのに、なんでそんなことできなかったのだろう。バカバカバカ。と思いながら一生懸命準備する。うまくいかない。太田さんはカルガモ走行に出発してしまう。ええい!ゆるゆるのシートベルトのまま、カルガモ走行に参加した。ベルトが肩からずり落ちそうだ。太田さんにこんなこと知られたらとんでもない。恥ずかしい。あきれられたら困ってしまう。コースマーシャルに止められたら困っちゃう。肩をいからせ、シートベルトが肩からずり落ちるのを抑えた。ああ、なさけなや、なさけなや。クリッピングポイントなんて見る余裕はない。ひたすら、肩からシートベルトがずり落ちないように走った。かなりのいかり肩だったろう。
一周のカルガモ走行が終わり、ピットに入る。車を降り、シートベルトを調節する。見かねたイケメンメカ(すいません。お名前わかりません。イケメンでしたので、ここでは「イケメンメカ」で通します)が声を掛けてくれ、調節してくれた。おおっ!手際がいい!
「そして最後にここをこうやって。」イケメンの力強い腕がシートベルトの端を引っ張った瞬間、「ビユッ」という音とともに、僕はシートに縛り付けられた。そう、まさしく「縛り付けられた」という感覚で、まるで僕がシートの一部になったように、シートと一体となった。あり?ハンドルが遠い。ハンドルに届かない!イケメンメカもそれにすぐに気づき、シートをワンノッチ前に出す。さあ出発だ。
出発した僕が驚いたのは、一体感。シートと一体となったばかりか、車と一体となった感覚だった。体が揺さぶられず、車の向く方向に抵抗なく体が向く。ハンドルを切れば切っただけ、「体」がその方向に反応する。そんな感覚を味わった。気が付くと、コーナーの恐怖感が消えていた。それは強い味方だった。コーナーで毎回味わうグラベルに突っ込むのではないか、スピンするのではないか、という恐怖感が消えてしまえばこっちのもの。コーナーを攻める、攻める、攻める。ブレーキングはなるべく遅らせ、コーナー手前で一気に減速、車の向きを変えてアクセルを目一杯踏む。タコメーターの針がもどかしい。え〜い!もっと速く!
数週走ったところでピットイン。コース図を見直して・・・、と思ったら、声が掛かる。「もし良かったら、太田の車に同乗しませんか?ノーマルのGTとの違いを体感できますよ。」そう。僕の車は太田さんのプライベート・カーと同じ2?のGT。太田さんのレース専用車の3.2?のGTとは比べようもないが、2?のGTとであれば、違いが体感できるはず。
1回目の走行会参加の時、太田さん運転の車への同乗走行は、その速さと挙動に驚くばかりだった。2回目の走行会参加の時、同乗走行は、ブレーキングポイントが結構手前であったことに驚き、感心した。
さて、今回の同乗走行。結論から言えば、安心感。太田さんの車は3点式のノーマルなシートベルト。今回の僕の車で得られるようになった車との一体感なんてまるでない。それでも、自分の車でシートベルトで縛り付ける以上に安心感がある。もちろん、太田さんの運転だから、という精神的な安心感もあるだろう。でも、確実にそれだけではない何かがあった。
自分で運転した時の車の挙動不審。太田さんが運転した時の車の完璧な抑え込み。ロールが少なく、横滑りが水平に動く。「水すまし」のように、横方向にステップを切る、そんな感覚だった。また、今思い返して言えることだが(その時には気づかなかった)、滑る時間が短いこと。「ザッ」「ザッ」という短い音を出しながら、車が一挙に滑って向きを変える。一層の方向転換が必要な時には、太田さんがさらにハンドルを回す。「ザッ」。心地よい滑り音とともに車が向きを変えるのだった。


予選


お昼休みの後、いよいよ、アルファロメオチャレンジの予選だった。昼休み中、広報隠岐さんから「何か初めてのアルファロメオチャレンジを前に太田さんに聞きたいことはありませんか。」と質問されたが、何を聞いていいのかわからない。そんな時、太田さんが自らアドバイスをくれた。「3周ぐらい回ったら、60%程度のスピードに落として半周なり一周なり回ってください。限界まで運転したら、タイヤ、エンジン、ブレーキはたれてきます。それを休めて本来の性能を取り戻すためにも、3周程度走った後は、スピードを抑えて休ませた方がいい。」
さあ、いよいよ予選の開始だ。後から追い立てられると我を忘れるので、なるべく後方から参加。3周まわったところでぐっとスピードを落とした。周回遅れで後からビュンビュン抜かれるが気にしない。むしろ、スピードを落としたことで、周りに車がなくなって、思う存分、コーナーを攻めることができた。だって、どこで車の向きを急に変えようが、外にもっていかれようが、周りには誰もいない。マイペースで攻めた。
結果が発表された。2分46秒008。昨年6月の生まれて始めてのサーキット走行では、ベストラップ3分02秒272、昨年9月の2回目の走行会では、2分49秒470。な〜んだ、3秒しか速くなってないや。しかも総合25位。総走行台数25台。いわゆるどん尻でございます。まあいいや。速くなる改造をまったくしていないGT2.0。太田さんからは、「人と比べるんじゃなくて、自分がどれだけ速くなったかを比べるんだ」と言われていたのを心の中で反芻する。「3秒も速くなったんだ」と自分に言い聞かせた。


決勝


予選後の午後の走行会。予選終了後に並木メカと話していて、教えて頂いたのは、「FFって、アクセル踏んでるうちは、スピンしないんですよね!」という言葉。目からウロコ。4点式シートベルトで恐怖感のほとんどをなくしていた僕に、さらに拍車をかけるアドバイスだった。実際、思う存分攻められた。もう恐怖感は消え、「面白い」と思えた。外にふくらんでも、「どえりゃ〜!」っと気合一発。休憩することも忘れ、夢中で走った。実際、ベストラップは2分43秒006。こりゃ〜たいしたもんだ。僕にしては。走行会開始から40分ほどたった頃、休憩しようとパドックへ。丁度、決勝の準備に入っていた。各車順番に並び始めていた。僕は最後尾。並木メカがタイヤのボルトを締めなおしてくれる。
さあいよいよだ。ピットレーンにみんなで並んで入っていく。2人の可愛いレースクイーンが笑顔で手を振って各車を応援。ピットレーンに一列に並び、コースが開くのを待つ。コースが開いた。各車ややゆっくり目にコースを走る。最終コーナーを回り、ホームストレートへ。僕のスターティンググリッドは、当然最後尾。互い違いに並ぶ最終グリッド右側。前の車がグリッドに停止するのを見て、自分のグリッドがようやく判明。
グリッドに停止し、シグナルを見る。プアーン!サイレンが鳴る。最後尾では、一番前で何が起こっているやらわからなかったが、実はこの時最前列でレースクイーンが「3分前」「1分前」というプラカードでスタートの時間を知らせてくれていたらしい。最後尾はつまらない!待ち時間もわからない!レースクイーンも見られない!
シグナルが赤く光る!消えた!スタートだ。テレビで見ていたF1では、後のグリッドから、車を横に出して前の車を1コーナー手前で抜いてたっけ。よし!っと思ったが、車を横に出すまでもなく、すぐに前の車に引き離される。アクセルは床まで踏みっぱなし!1コーナーが迫る!ブレーキング!おや?前の車2台にほとんど並んだぞ!左にTEZZO RACERS CLUBの弥太郎さん、右にも同じくTEZZO RACERS CLUBの式場さん。そのまま2コーナーを回る。式場さんが右にふくらんだ。コースアウトぎりぎり。「よっしゃ!」インコースの弥太郎さんには追いつけなかったが、そのまま弥太郎さんの直後に僕、その後に式場さん、と並んでコースを進む。コーナーを攻める。直線は全開だ!
ところがどっこい、1周目、最終コーナー手前の直線で、あっさりアウトから式場さんに抜かれる。あまりにもあっさりで、声も出ない。
そのままレースは進み、僕は式場さんを抜くチャンスさえなく、ず〜っと式場さんのお尻を見ながら、でもコースを攻めながら夢中で走った。途中、アウトにふくらんで、曲がりきれず、コース外に片足突っ込むこと2回。冷や汗がほとばしる。
そして・・・・、チェッカーフラッグが見えた。7周したらしい。ため息をつくことも忘れ、最後の周回をゆっくり目に回る。式場さんのお尻を見ながら・・・。
パドックに車を停め、ベルトをはずし、車を出る。「放心」。20分余りの決勝の時間内の集中と緊張が一挙に切れた。ヘルメットを脱ぐことも忘れて、肩も落ちてただ立ち尽くす。広報隠岐さんが近寄ってきて「パチリ」。僕の放心状態の姿は、後にTEZZO RACERS CLUBのホームページにしっかり載った。


リザルト


結果発表だ。ベストラップは2分37秒947!なに〜!!30秒台!!速い人には、話にならないタイムだろうが、前回の走行会から比べると11秒余りの時間短縮。しかも30秒台。いいじゃない!いいじゃない!太田さんが声をかけてくれた。「10秒以上速くなったんだって。すごいね。」いや〜、太田さんがほめてくれるなんて、うれしかったが、照れくさかった。へっへっへ。

後片付けをしていたら、太田さんが僕の車のタイヤを見ていた。そしてアドバイス。「だいぶ攻め込むことができるようになったね。それはいいこと。ただ、コーナーでハンドルを『こじって』るでしょ。このタイヤの磨り減り方でそれがわかるよ。コーナー手前で減速して、向きを変えてアクセル踏んで、ハンドルこじってさらに曲げようとしているから、車が滑る。滑る割りに速くない。そうでなくて、ブレーキを踏みながらコーナーに入って、車の向きを変えて、アクセルに切り替えてコーナー出口でスピードに乗る。このやり方ができたらもっと速くなるよ。」おお〜、この人は、タイヤ見ただけで僕の走り方まで言い当てちゃうのね。まったくまさしく言われたとおりだった。サーキット走行は奥が深い。次はそれ、やってみよう。

表彰式だ。僕の車のクラスはAR150-6。アルファロメオチャレンジは、クラス別の表彰。このクラスの参加は、僕と弥太郎さんの2台だけ。従って、自動的に僕はクラス2位となる。「やった〜!表彰台!」僕の名前が呼ばれ、表彰台の「2」のところに上がる。レースクイーンがカップと記念品を手渡してくれる。思わず2回も握手しちゃった。生まれて初めての表彰台でのシャンパンファイト。シュワシュワシュワ!ちゃんとしたやり方知らなかったからあまり飛ばなかったが、シャンパンがほとばしる!


エピローグ


東京に帰って、また普段の生活が始まった。会社の女の子からレースのことを聞かれ、表彰台に登り、レースクイーンからカップを手渡された話をした。
小さい会社とは言え、僕だって、10人の部下を抱え、「部長」の肩書きを持つ男。見栄もあればプライドもある。だから会社の人間には、総合でドン尻だったこと、同じクラスには2台しか出場していないことは秘密にしてある。


おわり








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