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僕が思い描く理想のアルファを作る、というコンセプトで始まったこの企画。アルファGTをベースにアルファチャレンジの市販車クラスにエントリー。そこで得たノウハウを元に、理想のストリートカーを仕上げるという構想だ。

 走る実験室の意味合いで参戦しているアルファチャレンジ出場は、今期3レース目。前回のレースではドライブシャフトのベアリング破損によって走れなかったため、万全の策を講じてむかえた富士のレース。のはずだったが、滑り出しは必ずしも順調ではなかった。

 まずは、今回、進化させたものについて説明しよう。走行中、高熱によって耐久性が落ちてしまうことが判明したドライブシャフトとブレーキを同時に冷却するダクトを装着した。最初は車両前面部からダクトを引くことを考えたが、アルファGTはラジエターとオイルクーラーが全面を覆っていて、追加の冷却ダクトを通す余地がない。そこで、弁当箱型のダクトをFRPで整形し、下面に装着。エンジンのアンダーカバーに穴を開け、そこにダクトを通して、ドライブシャフトまで持っていくことにした。チームメカニックの並木が工夫してきれいな作業をした。

 ドライブシャフトのブーツも耐久性の高いものに交換。グリスも耐熱性の高いものをBPのラインナップから選んだ。もちろん前回破損したドライブシャフトも念のため左右ともアッセンブリーで交換した。

 さらに、車高を下げたことでシャフトが水平でなくなってしまっていたので、連結部に負担がかからない角度になるところまで、車高を戻した(上げた)。

 各部のチェックを行うテスト走行では、今回の改良でドライブシャフトやブレーキキャリパーの温度が大幅に下がったことが確認できた。

 しかし別の問題も起こった。ブレーキの片効き現象が起きて、ブレーキングで左右に首を振って挙動が安定しないのだ。このままではフルブレーキをするのは無理。またしても新たなトラブルが発生してしまった。原因は何なのだろう?

 どうやらこの現象はフロントブレーキに原因があるような感じだ。ブレーキはリア、フロントともキャリパーも含めてオーバーホールしてある。エア抜きもやった。パッドもほぼ新品。後は何が考えられる? 並木メカが深刻な表情で考え込む。

 会場に来てくれていた、ブレーキメーカーAPを取り扱う大戸さんやフェラーリで有名なアライ板金の荒井社長を交えて、ミーティングをする。考えられる原因はローターしかない、という結論に至った。研磨してあって見た目はきれいだけど、もしかしたらヒートスポットができているのかもしれない。とは言え、決勝前の短い時間でローターを交換する間はない。

 緊急対策として、パッドの左右を入れ替えてみることにした。接触面が変化してフィーリングが変わるかもしれない。

 そして、決勝。対策が功を奏し、本レースではとりあえず直った。カーボンパッド本来の性能を発揮し、高温でもフェードの兆候は一切なく効き味も変わらず安定しているから、攻める気になれる。スタート1周目から最周ラップまでまったくフィーリングが変わることなく(これはすごいことなのだ)終始安定した性能を発揮してくれた。

 今シーズンは、ショックアブソーバーにクワンタムを採用することにしたのも大きなトライだ。共同開発中で、バネレートも減衰力もまだ暫定的な数値だが、それでもその可能性を今回は存分に感じることができた。

 そもそもクワンタムは、アライ板金の荒井さんから勧められた。実はクワンタムジャパンの岩田社長は、僕と旧知の間柄だ。その昔、僕がF3000に出場していた頃、彼はミカサロのマネージメントをしていた。怪我をした僕の代役として、外人ドライバーを紹介してくれたこともある。

 そんなわけで、気心が知れてすぐにこちらの意向を理解してくれた。アルファのV6は頭が重くしかも大パワーのFFで、バネと減衰力を強くしないといけない。しかしそうすると、ショックの初期の作動が渋くなりゴツゴツしがち。だけれどもクァンタ厶はそれが無い。特に重量級スポーツには大きな武器になると確信していた。またシーズン後にOTA-VERSIONのストリートカーを作ることを考えると、クァンタ厶のしなやかさは魅力だった。

 実際に路面にしなやかに追従してくれるので、コーナリング速度を高く保つことができし、トラクションもよくかかる。圧巻なのは高速100Rコーナーだった。4速で入っていくといい感じで向きが変わっていくのだ。

 そもそも頭の重いV6だと100Rのような高速コーナーでは、どうしてもアンダーが出やすく、そうなるとアクセルをそろりそろり踏むしかないのだが、前輪のグリップがよくてテールがいい感じでスライドしてくれるので、四輪ドリフト状態で駆け抜けられるのだ。

 後半のワインディングのようなS字が続く3速で切り返すセクションでも、通常だとクルマの姿勢が安定するのを待つ「時間」が必要となるけど、OTA-VERSIONアルファGTは「待ち」がなくスムーズに切り返せる。かなりセッティングが煮詰まってきたことを実感した。

 次回はさらにフロントを固めてさらに気持ちよく走れるようにしようと思う。

 それにしても、今回、つくづくレースが耐久面でも操縦性の面でもクルマ作りに最良の実験室であることを感じた。ゴール後、並木メカの安堵とうれしさが混じった笑顔が印象的だった。

 

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